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【分かりやすく解説】広島/長崎型原爆の違い&長崎型の超技術

広島/長崎原爆の違い

アメリカは世界初の原爆実験成功からわずか数週間の内に、2種類の全く異なる原爆を日本に投入しました。そもそも何故、2種類の原爆が開発されたのか?長崎型原爆に秘められた超技術とは?本記事では、そんな2つの原爆(広島型 / 長崎型)の違いについて解説していきます。

なお、本記事の一部は以下の書籍を参考にしています。

原爆から原発までゼロからわかる決定版! 原爆、水爆、中性子爆弾……人類を消滅し尽くす超巨大エネルギーはどのように生れるのか? 核分裂・核融合の原理から放射能の怖さまで、現代人が知っておくべき核の知識を初歩から徹底解説! (講談社現代新書)

日本に落とされた2種類の原爆

広島型原爆とは?

広島型では単独では臨界量*に満たないものの、合体させると臨界し核爆発に至るウラン235を2箇所に分けておき、片方のウランの傍に火薬を入れておきます。

*臨界量とは、核物質を放っておいても核分裂が自然に進行し核爆発してしまう量を指します。

広島原爆の仕組み

火薬に点火すると双方のウランが衝突して一体化し、核爆発を起こさせる単純な仕組みでした。

ちなみに広島型原爆は、事前の核実験すら無しにぶっつけ本番で投下されました。

なお原子爆弾の基本事項は、以下の記事↓にまとめてあります。まずはこちらをお読み頂くことをお勧め致します。

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長崎型原爆とは?

一方の長崎型は低密度で臨界量に満たない球形状のプルトニウムを爆弾の中心に配置しておきます。*核物質の臨界量は密度によって変わります。

低密度プルトニウムを取り囲んで配置された点火源に一斉着火すると、火薬の爆発圧でプルトニウムが中心部で圧縮され高密度になり、臨界に至らしめて核爆発させる仕組みでした。

長崎原爆の仕組み

この長崎型原爆の実現には相当高度な技術が求められ、実現は困難を極めました。

長崎型原爆に秘められた超技術

プルトニウムを球形状に均一圧縮すること自体がまず困難でした。

当然ですが、点火源からプルトニウムまでの距離が短いほど火薬の燃焼&爆発圧が先に伝わり、逆に遠いほど遅く伝わります。結果、プルトニウムがいびつに圧縮されてしまい、まともに核爆発しないことが分かっていました。

長崎原爆の課題

爆縮レンズの発明

そこで燃焼速度の異なる火薬&コブ形状を組み合わせた【爆縮レンズ】が考案されました。

燃焼速度が遅い火薬において、点火源が頂点に来る位置でコブ形状を追加することで問題を解決したのです。

長崎原爆の爆縮レンズ

赤矢印のように点火源からの距離が近い経路では、燃焼の遅い火薬(コブの頂点)に先に到達しますが、コブ形状の高さ分だけ燃焼の遅い火薬を進む距離が長くなります。

一方で緑矢印のように点火源から距離が離れるほど、コブが無い、もしくはコブ高さが低くなるので燃焼速度の遅い火薬を進む距離が短くなります。

このようにして火薬の燃焼&爆発圧が伝わるタイミングを調整し、プルトニウムに至るまでのタイミングを揃えることで球形状の均一な圧縮が可能になりました。コブは爆縮レンズと呼ばれています(本質的な役割が、一般的な光学レンズとそっくりな為)。

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新型雷管の発明

厳密にいえば、複数ある点火源への着火タイミングのズレも1000万分の1秒未満に抑える必要がありました。着火タイミングが各点火源でズレてしまえば、当然ながら均一な圧縮は不可能になります。そこで新型雷管が発明されました。

長崎原爆の改良

従来の雷管(火薬への着火装置のこと)は雷管配線に電気を流し、配線から発生する熱で火薬に着火させます。これでは着火タイミングに1万分の1秒の誤差が生じ、目標に遥か及びません。

一方の新型雷管では、配線に相当な大電流を流し雷管そのものを爆発させる形で火薬に延焼させるという常識破りの代物でした。この発明により、着火タイミングのズレを4000万分の1秒程度の誤差(目標値の更に1/4)に抑えることに成功しました。

その他、構造設計

これら技術革新により長崎型原爆は完成したのです。ただし、そんなアメリカでも長崎型原爆の設計には本当に苦戦しました。

爆縮レンズの形状設計や、複数の点火源をどの位置に何個配置すればプルトニウムの均一な圧縮が最も適切に行えるか、新たな計算手法すら発明しつつ構造設計の最適化に成功したのです。

原爆開発者 フォン・ノイマン

フォン・ノイマン : 著名なアメリカの数学者で、コンピュータの開発を筆頭に、あらゆる分野で知られる。爆縮レンズの設計にてZND理論を編み出し、火薬の爆発に関する数理モデルを確立(画像は引用wikipedia*パブリックドメイン)。

↑フォン・ノイマン : 著名なアメリカの数学者で、コンピュータや原爆の開発を筆頭にあらゆる分野で知られる。爆縮レンズの設計ではZND理論を編み出し、火薬の爆発に関する数理モデルを確立。

そもそも、なぜ2種類の原爆が開発されたのか

長崎型の開発がそれほど困難なら、なぜアメリカは長崎型の開発を必要としたのでしょうか?

答えは広島型に使用されるウラン235の濃縮が難しく、ウラン型(広島型)原爆の量産が困難だったからです。

ウランは自然界に存在するウラン鉱石に含まれていますが、そこからウランを抽出しても99.3%はウラン238という通常は核分裂を起こさない物質です。残りのわずか0.7%を占めるウラン235だけが核分裂を起こします。

ウラン235の抽出

なので膨大なウラン鉱石からウランを抽出し、そこから希少なウラン235だけを濃縮する作業が必要になります。これには莫大なエネルギーが必要となり、必要量の生成が終戦までに間に合わない可能性がありました。

実際、ウランを使用する広島型原爆が完成したのは原爆投下のわずか2週間前でした。それまでに生成された濃縮ウラン235は原爆1発分しかなく、事前の検証実験無しにそのまま広島に投下されました。

日本・ドイツも原爆開発を行っていましたが、同じくウラン235の濃縮に苦戦して開発を諦めた経緯があります。

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濃縮困難なウラン235の替わりにアメリカが目を付けたのが、長崎型原爆に使用されたプルトニウムでした。プルトニウムは原子炉を使えば容易に生産できました。

しかし不純物が混ざりやすい欠点があり、広島型の単純な構造では核爆発がまともに起こりません。

だからこそアメリカは、前述のインプロージョン方式による原爆の構造設計に総力を挙げて取り組んだのです。この方式を用いると爆弾の中心部で核物質が高密度に圧縮される為に臨界に至りやすく、不純物の多いプルトニウムでも核爆発が可能で、しかも威力は広島型の1.4倍に大きくすることが出来ました。

広島/長崎原爆のメリット・デメリット

ちなみにプルトニウムではなくウランを長崎型(インプロージョン方式)に採用していれば、長崎型原爆の威力は史実よりも更に上がっていたはずでした。

しかし前述の通り濃縮ウランの生成量が限られていた為、高い技術を要する長崎型に使用するような"懸け"には出ず、構造が単純で成功確率の高い広島型に用いました。

このような経緯があり、アメリカは核物質の異なる2種類の原爆を並行して開発したのです。

なんで、こんな国と戦争したんでしょうね。

ただし、日本やナチス・ドイツが原爆開発を進めていたことも忘れてはなりません。実際、アメリカはナチス・ドイツが原爆開発を進めていることを知ったことがきっかけで、慌てて原爆開発のプロジェクトを立ち上げました。

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今回はここで終わりにします。

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