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【ミクロ観察の"限界"】顕微鏡で観察できる大きさの限界は何で決まるのか?

顕微鏡には様々な種類がありますが、観察できる大きさの限界は何で決まるのか?どこまで小さい物体まで観察できるのか?かなり意外ですが、量子力学やブラックホールとも密接に関係してきます。そんなミクロ観察の【限界】について紹介していきます。

なお本記事の一部は以下の書籍を参考にしています。

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肉眼の"限界"

本題前に肉眼の限界について。人間の肉眼が観察できる最小サイズ(これを分解能と言います)は0.1mm(*mm : ミリメートル。1mの1/1000)と言われています。

例として人間の卵子の直径が0.14mm、ゾウリムシのサイズが0.2~0.3mmであり、この辺りまでの観察が肉眼にとっての限界と言えるでしょう。肉眼でも意外と見えるもんですね。

左 : ヒトの卵細胞
右 : ゾウリムシ

光学顕微鏡の"限界"

一般的に使われる光学顕微鏡について、分解能は最小で0.2μm(*μm : ミクロンメートル。1mmの更に1/1000)程度で、肉眼の500倍の分解能を持ちます。

例として、人間の赤血球(8μm)や大腸菌(0.5μm~3μm)などが観察可能になってきます。

左 : 赤血球
右 : 大腸菌

光学顕微鏡は可視光を観察対象に当て、そこからの反射光により微小物体の構造を観察する装置です。光学顕微鏡では可視光の波長を大きく下回る小さな物体までは観察できません。観察物よりも大きい道具(波長)で、それより小さいものをはっきり観察することは出来ないのです。

そして光学顕微鏡では、対象物からの複数の反射光を肉眼でそれぞれ独立に識別出来るよう接眼レンズ(拡大レンズ)を用いることで、分解能は最小で0.2μmになります。

人間の肉眼も光学顕微鏡も、物体から反射した可視光を観察するという点で本質的に同じ行為です。しかし光学顕微鏡には光学レンズが採用されている為に、肉眼では識別できない微小構造の観察可能なのです。つまり双方には光学レンズの有無の違いが存在するだけです。

そんな肉眼や光学顕微鏡とテクノロジーで一線を画した装置が、電子顕微鏡です。

電子顕微鏡の"限界"と量子力学

電子顕微鏡の分解能は最小で0.1nm(*nm : ナノメートル。1μmの更に1/1000)程度で、光学顕微鏡の2000倍の分解能を持ちます。

例として、コロナウイルス(直径100nm)や人間のDNA(直径2nm)が電子顕微鏡では観察可能になります。

左 : COVID-19
右 : DNA

電子顕微鏡では加速した電子を物体にぶつけ、そこから反射(もしくは透過)してきた電子を観測する形で、微小物体の観察が可能になります。電子は【素粒子】と呼ばれており、その大きさは長さの単位で表せないほど極小です。前述の光学顕微鏡のロジックだと、そんな電子であればどんな微小サイズの物体でも観察できそうですが、実際はそうなりません。

粒子と波動の2重性

電子も(実は光学顕微鏡に使われる光も)同様に、量子力学の世界では粒子としての性質以外に波としての性質を併せ持ちます。

波としての電子を考えると、波長は電子を加速すればするほど(=電子の運動エネルギーを大きくするほど)短くなりますが、それでも有限の波長サイズになります。電子顕微鏡装置により電子を最大限加速した場合、電子の波長は最小で0.1nm程度となり前述の分解能となります。

粒子加速器の"限界"とブラックホール!?

電子顕微鏡では粒子を加速するにも限界がありますが、超巨大な加速器を作れば更に小さい物体を観察することができます。これを粒子加速器と呼称します。つまり粒子加速器とは超大掛かりな【顕微鏡】なのです。

有名な加速器は、ヒッグス粒子を発見した欧州連合のCERNが所有する大型ハドロン衝突型加速器です。巨大な加速器で陽子を光速の99.999999%まで加速した結果、分解能は1000京分の1メートルとなり、電子顕微鏡の10万倍の分解能を達成しました。

ちなみに日本も自国で粒子加速器を保有しています。加速器は一般的にリング状であり、粒子をリング内で長時間加速し続けます。*CERNの加速器は地中に埋まっている為、掲載を見送りました。CERNのリングの大きさはJR山手線の全長に匹敵します。

日本の粒子加速器 : SPring-8

それでは粒子加速器の分解能に限界はあるのでしょうか?ズバリ、あります。限界を決めるのはブラックホールの生成です。

ブラックホールと粒子加速器

アインシュタインが提唱したように、エネルギーと質量は本質的に等価です。光速近くまで加速した粒子の運動エネルギーは極めて大きいので、当該粒子は極めて大きな質量を持っていることになります。

加速器の中で複数の粒子を衝突させるとどうなるでしょう?粒子が合体することで、更に大きな質量を持つ物体が誕生し、その周りには莫大な重力が発生します。この重力が一定値を超えると粒子や光でさえ逃れられないブラックホールが誕生します。

ブラックホールの中を観察することは出来ないので、【顕微鏡としての加速器】の分解能向上もここでストップします。これが加速器の限界です。

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とはいえ、人工的にブラックホールを作り出せるという事実は人類にとって確かにショッキングでしょう。アインシュタインが存在を予言したブラックホールが宇宙空間で初めて発見されたのはわずか10年前(2011年)です。そこから人類はブラックホールを自ら作り出せるまであと一歩の所まで進歩しているのですから、科学の発展は目覚ましいですね。

今回はここで終わります。

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