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【分かりやすく解説】水素爆弾の壮絶な仕組みと威力&原子爆弾との違い

水素爆弾

なぜ水素爆弾は原子爆弾よりも遥かに強力なのか?水素爆弾の起爆剤にはなぜ原子爆弾が使用されるのか?原子爆弾とどのように違うのか?水素爆弾ではなぜ3回もの核爆発が起こるのか?そんな水素爆弾の仕組みや威力について詳細に解説していきます。

水素爆弾の概要と、その強大な威力

原子爆弾は核分裂を応用していますが、水素爆弾は核融合を用いて核爆発を起こします。核融合の際に膨大な核エネルギーを放出するため水素爆弾として応用されています。

点火源に【原子爆弾】を使用

核融合を起こす為に原子爆弾が使用されます。互いに異なる原子核は正電荷の陽子により、互いの距離が近づくほど電気的に反発して軌道が逸れる為、通常は互いに衝突せず核融合も起こりません。しかし、十分に高温・高圧な条件下では双方の原子が電気的反発の影響を打ち負かすほど高速で衝突するので、結果として核融合が起こります。

この核融合を起こせるほどの高温・高圧な状況を作り出すことは一般的には非常に困難です。

水爆と原爆の関係

そこで水爆の開発者は、水素爆弾の点火源に原子爆弾を使うことを思いつきました。原爆から発生する高温・高圧の環境が整ってはじめて核融合が起こります。

なぜ水爆実験は海中で行われるのか?

本記事のトップ画像のように、水爆実験は一般的に海の中で行われる為、物凄い水柱が立ち込める写真をご覧になったことがある方も多いと思います。これは水爆の威力が大きすぎて、地上で爆発させると”実験”では済まされないレベルでとんでもないことになる為です。

過去にソ連が【地上で】水爆実験を行ったことがありますが、爆風が地球を3周したそうです。威力は広島型原爆の3300倍でした。

 

なぜ原爆より水爆の方が遥かに強力なのか?

少し突っ込んで解説します。事前に以下の記事↓の核力に関する記載を読んで頂くと、よりスムーズに理解できます。

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↑記事前提での説明をします。まず原子核に働く核力の大きさは原子によって異なる為、核融合や核分裂で別の原子に移行する際、核力の差分が発生し核エネルギーとして放出されます。

原爆と水爆の核力の違い

核力は鉄(Fe)の原子核に最も強く働き、鉄から原子番号が離れるほど核力は低減していきます(4Heだけは変則的ですが)。お椀を逆さにした様なグラフになる為、図中に緑で示した核分裂(原子番号が小さくなる反応)・赤で示した核融合(原子番号が大きくなる反応)のどちらでも核力の差分が発生し、核エネルギーの放出(≒核兵器としての応用)が可能となるわけです。

上図を見ていただくと、ウランの核分裂(原爆に使用)と水素やリチウムの核融合(水爆に使用)によって生じる核力の差分は、後者の方が圧倒的に大きいことが分かります。そのため、水爆の方が遥かに大きな核エネルギーを外部に放出でき威力が高いのです。

少し脱線しますが、上図より鉄が最も核力が強くエネルギー的に安定した原子核をもつので、全ての原子は鉄になることを目指しているとも言えます。宇宙は最終的に鉄だらけになる可能性もあるわけです。現時点でも地球の質量の1/3は鉄です。

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水爆の核エネルギーの放出

核力が働いていない状態、つまり核力0の状態では、中性子や陽子は自由に飛び回ることができますよね?これはエネルギーレベルで言えば高い状態なんです。

そして核力が働いてこれらの粒子が原子核に閉じ込められると、移動が制限される分、エネルギー的には低い(=安定した)状態になるんです。核力が強くなるほどエネルギー状態が低くなっていきます。

つまり核融合/核分裂により核力が大きくなる方向に動く⇒エネルギーがその分だけ低くなる、ことになるので、その過程で差分の核力は核エネルギーとして【放出】されることになります。

水素爆弾では核爆発が【3回】も起こる!

図を用いて、核爆発が3回起こる仕組みを解説しますと、

水爆の構造

  1. まず原爆を核分裂で爆発させ、高温にすることで重水素とリチウムの核融合を促す。

    *ちなみに図中のプルトニウム239は点火源の原爆から照射される中性子線で核分裂を起こし、           重水素化リチウムを内側から外側の方向に高圧で圧縮し、核融合を容易にさせる役割があります。

  2. 重水素とリチウムの核融合起因の爆発で2回目の核爆発が生じる。
  3. 2.により発生した高速中性子が外殻を覆うウラン238に衝突し、これが核分裂起因の爆発を引き起こす。これにより3回目の核爆発が起こる。

水爆とは核融合を用いた核兵器であることは有名ですが、その水爆でさえ核分裂起因の爆発の方が多いのです。

トータルで見ると相当な威力になります。威力の構成で見ると、当初の水爆は2.の核融合による爆発エネルギーが支配的でした。しかしながら、その後の水爆開発によって3.の核分裂による爆発エネルギーを威力のメインに据えている水爆もあります。後者の水爆でなぜ威力が増すかは【高速中性子】が関係していますが、別の機会に触れます。

なお、核兵器や原子力発電などの根本的な理解には以下の書籍がお勧めです。

原爆から原発までゼロからわかる決定版! 原爆、水爆、中性子爆弾……人類を消滅し尽くす超巨大エネルギーはどのように生れるのか? 核分裂・核融合の原理から放射能の怖さまで、現代人が知っておくべき核の知識を初歩から徹底解説! (講談社現代新書)

意外と複雑な核融合

核融合は意外と複雑な過程を踏みます。

水爆の例(重水素とリチウムの核融合)を取ると、実際には以下のように核融合/分裂を繰り返す形になります。

水素の核融合過程

まず水爆の点火源である原子爆弾から照射される中性子がリチウムに衝突、核分裂をして3重水素とヘリウムが生じます。この内、3重水素が重水素と核融合し、最終的には2つのヘリウムと中性子1つが生成されます。

重要なのは上記過程で中性子が発生し、これが再度リチウムにぶつかることで更なる核分裂/核融合が起こる連鎖反応が起こる点です。

水爆を開発する上では、原子爆弾の開発に成功した上、上図の複雑な核融合/分裂過程を制御する必要がある点で技術的には相当ハードルが高いのです。

にも拘わらず、北朝鮮は水爆の開発に成功したと主張しています。本当かわかりませんが、人工衛星の打ち上げに成功した北朝鮮なら、水爆の開発能力もあるのかもしれませんね。

今回はこの辺りで終わりにしようと思います。

 

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