皆さんは以下の農産物がアメリカ大陸原産であったことはご存じでしょうか?
・ジャガイモ、トウモロコシ、サツマイモ、トマト、唐辛子
大航海時代を通じてアメリカ大陸が『発見』される前、(当然ですが)アメリカ原住民のインディアンを除きこれらの農作物の存在を知る者はいませんでした。
アメリカ大陸の発見以降、これら農作物は西洋人を介して世界中に知られ、人類の食文化に絶大な影響を与えます。今回はそんな影響の数々を前編・後編に分けて紹介していきます。
なお本記事のテーマであるアメリカ大陸の発見については、以下↓の『コロンブスの不平等交換』という本が面白いです。
西洋人を餓死から救ったジャガイモ
当初、西洋人はジャガイモを下等な食べ物として捉えていました。インディアンに対する偏見もあったのかも知れません。
あのフィッシュ・アンド・チップスで有名なイギリスでさえ、【ジャガイモは聖書に載っていないから悪魔の植物だ】などと言われる有り様で普及しませんでした。
西洋人によるジャガイモ栽培の最初の発端はドイツでした。
ドイツは当時、三十年戦争という非常に長い戦争の最中にあり、国民が飢餓に苦しんでいました。そんな中で食用ジャガイモの栽培が普及していきます。
ジャガイモは以下の3つの特徴から戦争中の飢えを防ぐのに持って来いの農作物であり、それ故に次第に重宝されていきました。
1.外部からのダメージに強い
戦争が起こると戦場や戦場への通り道にある畑は人や馬によって踏み荒らされますが、小麦などはそのような外部のダメージに弱い一方で、ジャガイモは強いです。
2.収穫時期の制限が緩い
「~までに収穫しないと枯れてしまう!」といった収穫時期の制限が小麦よりも緩いので、お腹が空いたタイミングで掘り出して食べるといったことが出来ます。
畑を貯蔵庫として活用できる訳です。
3.寒さに強い
更に極めつけは冷害への強さです。
ヨーロッパ北部の主作物であった小麦は寒さに弱く、たびたび起こる飢饉の原因になっていました。フランス革命が勃発した要因の1つにも、冷害による小麦不足での国民の飢えがあったほどです。
少し話が逸れますが、マリー・アントワネットが飢える庶民に対し「パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」と言い放ったことは(真偽は不明ながらも)有名ですよね?
これは、贅沢云々以前にパンもケーキも当時の冷害で不足していた【小麦】から作られる訳で、「パンが無いならケーキを」という発言そのものが当時の王侯貴族たちの庶民の暮らしに対する無理解・無関心さを物語っている訳です。
フランス革命も起こるべくして起こった、と言えるかも知れません。
話を戻すと、ジャガイモはこの冷害にとにかく強いです。というより、ジャガイモの原産地がそもそも南米のアンデス山脈の高所なので、むしろ寒い方が育ちやすいのです。日本でもジャガイモの名産地と言えば北海道ですからね。
前述のようなジャガイモ特有の数々の利点により西洋人の食料事情は劇的に改善し、飢え死する人々は大きく減りました。
人類の「肉食」を支えるトウモロコシ
トウモロコシの大半は牛・豚などの家畜の餌として使われている、と聞くと驚かれる方も多いのではないでしょうか?
トウモロコシの世界消費は家畜向けが64%と最も多く、次いで工業用が32%、人間が直接食べるトウモロコシは全体の4%に過ぎません。人類の肉食を支えているのはトウモロコシと言っても過言ではないでしょう。
トウモロコシが無ければ、肉の値段は今よりも遥かに高かったはずです。
それにしてもなぜ、トウモロコシが家畜の餌として用いられるようになったのでしょうか?
答えはトウモロコシの安さにあります。小麦や米と比べて、トウモロコシは畑の単位面積あたり非常に多くの量が収穫できるため、所謂「コスパ」が良いのです。それ故、他の農作物よりもトウモロコシを餌にした方が安上がりであり、まわり回って牛肉や豚肉もお手頃価格になるのです。
「吉野家があるのもトウモロコシのお陰」と言っても過言ではないはずです。
次回の記事に続きます↓。
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アメリカ大陸の『発見』がもたらした食文化への絶大な影響【後編】
アメリカ大陸の『発見』がもたらした世界の食文化への影響はまだまだあります。 本記事では前回の記事では触れなかったサツマイモ・トマト・唐辛子について取り上げます。 前回の前編記事をまだ見てない方はこちら ...
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