アメリカ大陸の『発見』がもたらした世界の食文化への影響はまだまだあります。
本記事では前回の記事では触れなかったサツマイモ・トマト・唐辛子について取り上げます。
前回の前編記事をまだ見てない方はこちらから是非↓。 皆さんは以下の農産物がアメリカ大陸原産であったことはご存じでしょうか? ・ジャガイモ、トウモロコシ、サツマイモ、トマト、唐辛子 大航海時代を通じてアメリカ大陸が『発見』される前、(当然ですが)アメリカ ... 続きを見る
アメリカ大陸の『発見』がもたらした食文化への絶大な影響【前編】
なお本記事のテーマであるアメリカ大陸の発見については、以下↓の『コロンブスの不平等交換』という本が面白いです。
戦時下の日本を飢えから救ったサツマイモ
サツマイモは赤道に近い熱帯アメリカが原産です。
そのため前記事のジャガイモとは異なり、温暖な地域で育ちます。
日本には鹿児島(当時の薩摩藩)を経由して伝わったため、薩摩芋(サツマイモ)と呼ばれています。
大飢饉が普及のきっかけ
サツマイモが日本に普及するきっかけとなったのは、1732年に発生した享保の大飢饉でした。
飢饉の間、1万人以上もの方が無くなりましたが、サイマイモの生産を奨励していた薩摩藩だけは餓死者がほぼ出ませんでした。
サツマイモは栄養価が高く、痩せた土地でも良く育ち、かつ保存も効く優れた食物です。
これに目を付けた当時の江戸幕府将軍、徳川吉宗がサツマイモの生産を全国で奨励したことで伝搬していきます。
主食と化したサツマイモ
時は変わり、第2次世界大戦の後半。
当時の日本人は軍への供出米により少ない配給米しか貰えず、栄養失調に苦しんでいました。そんな日本人を何とか栄養面で支えたのが、サツマイモでした。
意外に思われるかも知れませんが、サツマイモはもはや当時の日本人の主食と化しており、サツマイモが無ければ多くの人々が餓死していたことでしょう。
ちなみに当時を経験した日本人達は、「もうサツマイモは食べたくない」と言う方が多いそうです。
私の祖母も同じことを言っていました。それほど戦時下の日本人はサツマイモばかり食べていたのでしょう。
逆に言えば、サツマイモのお陰で当時の日本人が生きながらえ、その子孫まで命が繋がっていったと考えると、サツマイモには感謝しかないですね。
イタリア人庭師の【危険な賭け】で広まったトマト
トマトと言えば、伝統的なイタリア料理を思い浮かべる方も多いと思います。
そんなトマトもアメリカ原産で大航海時代以降に広まった野菜であり、かつ西洋人の偏見から食用として用いられたのは18世紀以降と歴史は浅いです。
つまり【伝統的なイタリア料理】にはトマトは使われていなかったのです。
イタリア人庭師の【賭け】
トマトは当初、毒リンゴと呼ばれていました。
当時の貴族が使用していた食器に鉛が含まれており、トマトの酸により鉛が漏出し鉛中毒に陥るケースが相次いだためです。
かつトマトの見た目が他の有毒植物と似ていたこともあり、専ら観賞用としての扱いで、これを食べる人などいませんでした。
しかしながら、腹をすかせたイタリア人庭師が観賞用のトマトを茎からもぎ取り「ダメ元で食べてみた」ことをきっかけに、問題無いことが分かりイタリア中に普及していきます。
死ぬリスク(があると当時は思われていた)と引き換えで、腹ペコを理由に食べちゃう辺りが適当なイタリア人っぽい所?なのかも知れません(偏見100%)。
栄養・色彩満点のトマト
トマトは栄養視点で見ると非常に優れた野菜で、カロリーは控え目であるものの抗酸化作用、生活習慣病予防、美肌効果などにも優れています。
西洋には「トマトが赤くなると(=育つと)、医者が青くなる」という格言があるほど体に良いものとして広く知られています。
加えて、その独特な色合いから料理に色彩を与えることができる点も評価され、トマトは今やイタリア料理には欠かせないものとなったのでした。
己の命を張った無謀な庭師に感謝しなければなりませんね。
世界の食文化を形造った唐辛子
食文化に与えた影響力、という観点で最もインパクトがあったのは唐辛子かもしれません。
唐辛子と言えば昔からありそうな感じもしますが、これもアメリカ原産なので意外と歴史は浅いです。
唐辛子という字面を見ると、「唐から伝わった辛子」になります。ここで言う唐とは漠然と「外国」を指しており、古代中国王朝の「唐」を指している訳ではないのは時系列的に明白です。
そんな歴史の浅い唐辛子ですが、瞬く間に世界中で新たな食文化を形成していきました。
唐辛子を使った料理メニューは世界中に沢山あります。
以下はほんの一例です。
・四川料理(中国料理)
・キムチ、コチュジャン(韓国料理)
・トムヤンクン、グリーンカレー(タイ料理)
・ペペロンチーノ(イタリア料理) *ペペロンチーノはイタリア語で唐辛子の意。
・チョリソ(スペイン料理)
優れたものは歴史の浅さなど関係なしに食文化に広く影響するものなんですね。
今回はここまでにしたいと思います。
前回の前編記事をまだ見てない方は是非↓
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